先のブログで書いた山口旅。
友人の一番のメインは、
お布団からシャツを作っておられる、関ヨシミさんの個展。
お会いすると、とても小柄で華奢なおばあ様。
お年は89歳でおられます。
ハリのあるお声と、お着物姿が美しい。
とてお素敵な紫のお着物を召されておいででした。
遠くから見ていると、小さな手が輝いて見えて驚きました。
手が違う。
日ごろ、手をたくさん使っておられるからでしょうか。
お嬢様が絵を描かれて、シャツの下にたくさんのカラフルでかわいい絵が飾られていました。
関ヨシミさんは、お布団から綿を取り出し、草木染で色を染め、糸を紡いではたを織り、
チェック柄の布を作り、それを使ってシャツを作っておられます。
話を聞いただけでも、気が遠くなるような工程ですが、
毎年、9枚のシャツを作っておられるのだとか。
一つ一つ、シャツのチェックの柄が違います。
自然の優しい色づかい、細い線、太い線、薄い色、濃い色、
そのパターンが頭の中に入っているのだということに、私は驚きました。
たぶん、何千とあるのでしょう。
遠方から来た私達にいろんな話をしてくださいました。
「ボロからボロを作ってはいけません。美しいものを作るんです。
美しいものをたくさん見て、自分の中にとりこんで、そこから表現をするんです。
どれだけ美しいものを見ているか、ということではないでしょうか。
人生とはそういうもの。
子供のころ、東京で戦争を経験し、新潟に疎開しました。
緑色の服を着させられたんですよ。ロシア兵が入ってきたら竹藪に逃げなさい、と言われてね。
昨年、主人が亡くなった時、悲しいというよりも、戦争を語れる人がまた一人亡くなったという思いが強かった。
戦争を知っている人がどんどん減っていきます。
私は戦争反対です。
今回の展示は、趣向を変えて、シャツの腕を上げて並べました。
(これまでは、マネキンがシャツを着ている展示だったそうです)
手をつないでいるように見えるでしょう?
みんなで手をつなごう。
これは、私の静かな意思の表現なんです。」
関さんのお話が心に染み入りました。
戦争を経験して生き抜いた人は、心が本当に強い。
1本筋のとおった生きざまを、見せていただいているような気がしました。
関さんは、お嬢さんと、野菜を育て、鶏を飼って、スマホを持たない生活をされています。
とても丁寧に生活されているのだろうな、と、私もひとつひとつを丁寧に生きたいと思いました。
お嬢様が、遠方からわざわざ、とチェックの小さな布をおみやげにくださいました。
柔らかくて、手触りがとても気持ちよいです。
この布を見るたびに、関さんの凛としたお姿が思い出されます。
今日はさっそく、この布をしいて、お茶とお土産に買ってきた和菓子をいただきました。
とても暖かい、澄んだ気持ちになりました。
ちなみに、関さん、何一つ、作品の販売はなさいません。
これも、また一筋通っておられます。
次の個展は来年の秋だそうです。
また、山口へ会いに行きたいと思います♪
山口旅 ~ お布団からシャツ
2024年4月8日